バター

●バターの特徴

バターは牛乳からクリームを分離し、そのクリームを攪拌してできた脂肪の粒を取り出し、水洗いして練ったもので、乳脂肪分は80%以上です。
バターの特徴的な性質は3つあります。1つ目は柔らかく伸びる性質(伸展性)です。その性質を利用したものがパイです。2つ目は生地をサクサクさせる性質(ショートネス性)。その代表的お菓子はクッキーです。そして、3つ目はバターを攪拌したときに多量の空気を抱き込む性質(クリーミング性)です。パウンドケーキなどがふっくらときめ細かくなるのは、それを生かしたものです。
なお、完全に溶けたバターを再度固めたものはお菓子作りには適しません。生地から脂が出やすくなったり、出来上がりにムラが出てしまうからです。バターの特徴を最大限生かすためには温度管理が非常に重要なのです。

●バターの種類

バターには「発酵バター」と「非発酵バター」があります。発酵バターは原材料のクリームを乳酸菌で発酵させたもので、独特の香り・コクがあります。発酵バターの特長を生かしやすいお菓子といえばパイやガレット、フィナンシェなどの焼き菓子ですね。
シンプルな焼き菓子は発酵バターの持つ香り・風味を引き出しやすいのです。たとえばフィナンシェでは発酵バターを熱して『焦がしバター(ブール・ノワゼット)』として使用することで、発酵の独特の香りが一層引き出されて風味豊かなお菓子となります。
非発酵バターは乳酸菌で発酵させていないため、クセのない風味です。日本ではこの非発酵バターが主流ですが、最近、ヨーロッパで修業して日本に帰ってきたパティシエが発酵バターを使うようになり、日本でも発酵バターがかなりポピュラーなものになってきました。
また塩分の使用・不使用で「有塩バター」と「食塩不使用バター」にも分類されます。お菓子作りには「食塩不使用バター」を主に使います。

●バターとマーガリンの違い

バターが乳脂肪のみから作られるのに対し、マーガリン植物性脂肪を使って作られたバターの代替品です。原材料以外の点でのこの2つの大きな違いはやはり味・香りだと思います。
マーガリンは価格面において魅力的ですが、香りがなく(マーガリンの香りは香料で添加されている)、焦がすと油っぽいにおいがします。
焼き菓子に使用した場合、冷めてから独特の油臭さが前面にきてしまい、焼き菓子特有の良い風味が出にくいので、やっぱりお菓子にはバターを使って欲しいですね。
せっかく手間ひまかけて作るなら味も香りも最高のものにしてほしいので...。

●実験!3種類のバターの使い方
~バターの使い方の違いによって、パウンドケーキの出来上がりを比較してみましょう!~

〈共通のパウンドケーキの材料〉

150g
バター
150g
薄力粉
150g
グラニュー糖
150g

【A】シュガーバッター法(バターをやわらかくして空気を含ませる)

①バターを柔らかくしてグラニュー糖を加えてすり混ぜます。
②①に卵を4~5回に分けて加えます。バターと卵が同量なので、卵が全て入った状態で少し分離気味になります。
最後に加える卵は少なめがベストです。最後の卵を加えたら混ぜすぎないように注意しましょう。
 ※卵が冷たいと、バターに水分が入りにくいので卵は常温に戻しておきましょう。
③薄力粉を加え、ダマがなくなってなめらかになるまで混ぜ、型に流し入れます。
④170~180℃のオーブンで約30分焼成します。

【B】フラワーバッター法(バターをやわらかくして粉と合わせる)

①バターを溶ける直前までやわらかくします。
②①に薄力粉を加えて、粉っぽさがなくなるまで混ぜます。
③別のボールに卵とグラニュー糖を入れて泡立てます。 ボールの底を湯煎にあてて、グラニュー糖のジャリジャリをなくします。湯煎からおろしてさらに泡立てます。
④③を3~4回に分けて②に加え混ぜ、型に流し入れます。
⑤170~180℃のオーブンで約30分焼成します。

【C】オールインワン法(バターを溶かす)

①バターを火にかけて溶かし、70℃位にさまします。
②ボールに卵とグラニュー糖を入れて泡立てます。
ボールの底を湯煎にあてて、グラニュー糖のジャリジャリをなくします。湯煎からおろしてさらに泡立てます。
③②に薄力粉を加えてなめらかになるまで混ぜます。
 ※混ぜすぎないように注意しましょう。
④③にバターを2~3回に分けて加え混ぜ合わせます。
型に流し入れて少し生地を休ませます。
⑤170~180℃のオーブンで約30分焼成します。

出来上がりの状態

見た目については、最もふくらんだのは【A】ですが、断面のきめは粗めでした。逆に【B】と【C】はあまりふくらまなかったものの、きめが細かく仕上がりました。
味については、【A】はふっくら軽い食感、【B】・【C】はしっとりした食感に仕上がりました。ただし、【A】はきめが粗いので時間がたつと固くなりやすく、一方、きめの細かい【B】・【C】はしっとりした食感が長く続きました。
作業性については、【A】や【C】は混ぜ合わせ方や温度によって分離しやすく、最も失敗なく作りやすいのは【B】でした。
この結果を参考に、作るケーキの種類やご自分が求める焼き上がりによってバターの使い方を考えてみてはいかがでしょうか?